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| 図8-4-1 レシオとスレッショルド |
それに対して、スレッショルド以上の入力に対して、どのくらい出力を圧縮するのかを決めるのが「RATIO」(レシオ)だ。。レシオは何種類かを選択するスイッチか、連続可変できるつまみになっていて、「3:1」みたいに比率の表示がしてあるのがほとんどだ。これは「入力:出力」を表わしていて、3:1なら入力が3あったら(普通なら出力も3出るところを)1しかでないように圧縮しているというこった。多くのコンプレッサはこのレシオが数種類の選べるか、連続可変ができるようになっている。∞:1(∞というのは無限大を表す記号)だったら、いくら入力しても、スレッショルド以上にはなりませんということだ。図8-4-1の右の図はレシオが∞:1で、スレッショルドを変化させたときの入出力の関係だ。
この2つがコンプレッサの操作の大基本となるコントロールだ。
で確かに思い切りのいいコンプレッサは、この2つのつまみしか付いていないものもあるのだけど、そのほかにもコントロールつまみがついているのが普通で、その代表選手が「ATTACK」(アタック)と「RELEASE」(リリース)だ。
アタックは何をコントロールするかというと、スレッショルドを超えた入力があった時に、すぐ圧縮を開始するのか、しばらくしてからのんびりと圧縮を始めるのかを決めるのだ。まあコンプレッサの寝起きの加減だと思っとけばいいな。(ちなみに私は寝起きが無茶無茶悪い。)
リリースはその逆で、圧縮がかかっている状態から、入力がスレッショルドより小さくなった時に、すぐ圧縮をやめるのか、ある程度の時間をかけてのんびりと圧縮を解除して行くのかをコントロールするものだ。これはコンプレッサの寝付きだと思っとけばよろし。そんなもんコントロールしてどうするんだと思うかもしれないけど、これによってコンプレッサのかけかたにかなりのバリエーションが増えるんだ。
さて、ここで昔気質のギタリストに「コンプレッサってどんなエフェクタなの?」と訊ねてみたとしよう。そうすると次のような答えが返ってきた。
「ああ、音をパキパキにするものだよ。」
「アタック音を強調するエフェクタだよ。」
「音を伸ばすものだな。」
??????「ちょっとまてよ、コンプレッサは音を圧縮するものだから、音がつぶれたり、アタック音がなくなることはあっても、間違ってもパキパキの音になったり、アタック音を強調したりするわけは無いんじゃないか?それに何で音が伸びるんだぁ?」と思わないかい?(思わない?あっそう。)凸(-_-#)
このギタリストの言っていることは気のせいでも何でもなく、コンプレッサの使い方のバリエーションによって音を圧縮するだけでなく、そういった効果を作ることもできるということなんだな。(昔はギター用のコンプレッサをサスティナと呼んでいたぐらいだ。)
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| 図8-4-2 通常のコンプレッサ |
それでレシオを2:1、スレッショルドを音量が2の時に設定したとする。そうすると普通に考えて出力は図8-4-2の右のようになるよね。(青の線は元の波形)これはアタックが0秒(最も早い状態)の時の出力エンベローブなのだ。でもこれではアタックの部分は強調されるどころか弱められてしまうだけだね。
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| 図8-4-3 アタックを強調するコンプレッサ |
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| 図8-4-4 リリースによるエンベローブ変化 |
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| 図8-4-5 アタックとリリースの悪い組合せ |
まあ、実際の使い方としては、アタックは積極的に音のエンベローブを変化させるもので、リリースはコンプレッサのかかり具合を自然に聞かせるためのものと考えていい。
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| 図8-4-6 音をのばす |
つまり「人間がやってできんことはないけど、とても面倒くさい。もしくは人間がやるには限りなく不可能に近い」音量操作をさせるというもの。たとえば「か行」だけがやたら声のでかくなる人(そんな奴はいないけど)がいたとして、その人の声を録音していたとしよう。(そういや昔の笑い話で、就職の面接の時に面接官に「家業は何ですか?」と聞かれて「か・き・く・け・こ」といってしまったってのがあったな)
もしその人が原稿通りにしゃべっているのであれば、原稿をチェックして「か行」のところだけ手作業で録音レベルを下げてやればいいけど、誰もこんなことに若き日の青春エネルギーを費やしたくないでしょ?それにこの人がアドリブで「本日はこのような場所にお招きいただきましてまことにありがとうございます、」なんてしゃべられた日にゃお手上げだ。
で、ここでコンプレッサの登場。レシオを1:∞にしといて、スレッショルドを「か行」の音量に合わせとく。そうすれば「か行」だけ音量が圧縮されるので、寝ていてもコンプレッサが勝手に音量をそろえてくれる。これをして「怠慢真寝」と言えぬ訳あろうや。(反語)まあ実際はそんな簡単なもんじゃない(現実には不確定要素が色々ある)ので、かけっぱなしでほっとくわけにはいかんのだけどね。
実際の使い方として多いのは「ある一定以上のレベルの信号を絶対出力したくない時」だ。コンプレッサをこういった使い方する時には特に、リミッタという名前が使われるわけだ。この場合のコンプレッサのセッティングは、これ以上は音が出てほしくない所をスレッショルドとして、レシオは20:0から∞:1、過大入力が入ったらすぐコンプレッサが効いて、終わったらもとの状態にすぐ復旧した方がいいので、アタックとリリースは両方とも最も短い値にする。考え方としては、コンプレッサ(リミッタ)が働いているときは「異常事態」と言うわけだ。
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| 図8-4-7 スピーカの保護 |
| 図8-4-8 入力オーバにならないようにする |
| 図8-4-9 放送局のリミッタ |
さらに放送関係では録音(録画)でもコンプレッサをかけることが多い。特にバラエティー系の番組の収音マイクからは予想も付かない入力が入ってくることが多いので必需品といってもいいだろうな。
「オヤヂギャグいきま〜す!」
「コーディネートはこうでねーと」
「のわんちって」
というような音量差をフェーダーワークで押さえるのは不可能なので、このような場合はコンプレッサは保険というよりも「かかって当たり前」といった感覚で使われる。このような使い方を「リミッタにあずける」というようないい方をする。
前述のリミッタに似てるんだけど、リミッタはとにかく一定以上の信号を出力しないことに重点を置いているのに対して、原音を重視しつつ過剰な部分のみコンプレッサで圧縮するといった考え方だ。(ただし各設定が見当違いになっているとかえってS/Nを悪化させてしまうことになるので気をつけよう)
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| 図8-4-10 テープレコーダのノイズ |
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| 図8-4-11 原音をなるべくそこなわないように |
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| 図8-4-12 テープレコーダの ノイズを避ける |
ボーカル関係の場合はスレッショルドを最大音量と最小音量の中間くらいにしてレシオは2:1程度だ。(PAの時なんかは4:1位にしてもう少しコンプレッサにあずけた方が、手間がなくていいとおもう)アタックは基本的に一番短い状態。リリースは大体300msec位に設定することが多い。音楽もののボーカル録音では録音時に、(ダイナミックレンジ稼ぎに)軽くコンプレッサをかけておいて、ミックスダウンの時にバランスを聴きながらもう一度コンプレッサをかけるという「二度がけ」もよく行われる。エフェクター全般にいえることなんだけど、一度エフェクターをかけて録音してしまったら、後からそのエフェクトを少なくしたり除去したりすることは不可能なので、くれぐれも録音時のコンプレッサは必要最低限にするように。
ベースの場合は、後述の「音作りのエフェクターとしてのコンプレッサ」の意味あいの方が強いんだけど、チョッパーなどの録音の時には、はじいた音だけをコンプレッサで圧縮するようにスレッショルドを設定して、レシオも大きめ(8:1程度)に取ることが多い。アタックは最も早い状態でリリースは100msec程度かな。この設定は前にいった「原音のイメージを損なわないようにコンプレッサをかける」というのに矛盾しているように思うかもしれんが、ベースのチョッパーの部分は、コンプレッサがかかった音が「チョッパーの音」として認知されてるから、この場合は構わないのだ。うはは。世の中なんてそんなものよ。
またS/Nを稼ぐのとはちょっと違うけど、キーボードなど音源によってベロシティーセンスが不必要に広いものがたまにあって、その場合音量差がありすぎて聞きづらい音になってしまうことがたまにあるけど、これを緩和するためにコンプレッサを使うこともある。
コンプレッサを音作りのツールとして使うというのは、結構上級編の使い方といえるだろう。慣れないうちはかなり深くコンプレッサをかけないとわからないかもしれないけど、コンプレッサをかけると独特の締った太い音になるんだな。まあこれはいい言い方をすればの話で、悪い言い方をすれば、こもった抜けの悪い音になる。とにかく音のイメージが変わるのは事実で、コンプレッサを積極的な音作りの道具として使うわけだ。
このような使い方をする音源には、キック、スネア、ベースなどがある。この場合スレッショルドは、ほぼかかりっぱなしの状態まで下げて、レシオは2:1〜4:1位に設定する。アタックは最も早い状態か、それより少し遅くしたくらい。リリースは大体300msecって所だろう。まあでも、このようなコンプレッサの使い方は、音を変化させるのが目的なので特にこの設定がいいという決まりはない。(ディレイは何msecで使うのがいいといっているようなものだ)特にレコーディングでは基本的にハウリングの心配がないので、ささやくような声(当然音量が小さいので、普通のコンプレッサの使い方なら確実にスレッショルド以下になる)に鬼畜のようにコンプレッサをかけて、音量を大きくしてミックスするなんていう非現実的な音も作ることが出来るわけだ。(S/Nは悪いけど)他のエフェクターと比べると効果の判りにくいエフェクターなので、取っつきにくいかもしれないけど、はまってしまうとなかなか奥の深いエフェクターだ。
| 写真8-4-1 UREI 1178 |
#1176や#1178がコントロール系で変わっているのは、スレッショルドは固定で、設定するつまみが付いていないことだ。それじゃどうやってスレッショルドを決めるのかというと、パネル左側の「INPUT」(インプット)と「OUTPUT」(アウトプット)のつまみを使うのだ。つまり入力側でスレッショルドを一定にしておけば、インプットを下げて入力を小さくすれば、相対的にスレッショルドは上がるし、インプットを上げて入力を大きくすれば、スレッショルドは相対的下がるということだ。ただしそのままでは、入力された信号に対して出力が大きくなったり小さくなったりして不都合なので、アウトプットのつまみで、インプットを下げた時は大きく、インプットを上げた時は小さくしてやってバランスを取るわけだ。具体的な手順は、アウトプットのつまみを適当に上げ、(12時くらいでいいと思う)音を聞いて(GRメーターでも確認しながら)インプットのつまみを徐々に上げていってコンプレッサのかかり具合(スレッショルド)を調整する。それが終わったら、コンプレッサをバイパスした時の音量と同じ様な音量になるようにアウトプットつまみを微調整するということだ。ちなみにアタックのつまみを左に回しきると、カチッと音がしてバイパス状態になる。
元々一度決めたら滅多に動かさないような用途(放送の送信機の前にはさむリミッタとしての用途など)用に設計されているということなんだけど、これは慣れないと使いにくいし、ミックスダウン中に「もう少しスレッショルドを変えよう」と思った時に音量まで変化してしまうのはいただけない。それでさすがにその後にスタジオ用のコンプレッサとして発売されたLA-4はこの方式をやめ、スレッショルドつまみで調整するようになっている。(余談だけど、スタジオでアシスタントやってる時「エルエーフォー」といわれて、LFO=低周波発信器と勘違いしていた事がある。)
その他のコントローラーは2台をステレオリンク(後述)するスイッチ、アタックつまみとリリースつまみ。レシオの切り替え(スイッチによる選択式4:1・8:1・12:1・20:1の4段階)とメータ表示の切り替え(VUメーターとGRメーターの切り替え。普通はGRメーターにしておく。また一番下はメーター表示のピークとVUの切替。どちらでも見やすい方でいい)がある。
| 写真8-4-2 GAIN BRAIN II |
| 写真8-4-3 dbx 160A |
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| 図8-4-13 OVER EASY |
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| 図8-4-14 ∞:1以上のレシオ設定 |
| 写真8-4-4 BSS DPR402 |
まあ、このGRメータはコンプレッサによってかなり違うので一概にはいえないけど、どういう表示をするかだけざっと紹介しておこう。VUメータというものは、普通のの使われ方では、入力信号がない場合は一番左を指しているものなのだけれど、GRメータとして使われる場合は、0VUを指して止まっている。で、スレッショルド以上の入力があったときにゲインを下げた分だけ左側に動いて、下げたゲインを「−何VU」というように表すしくみだ。よって、この場合のVUメータは、0VUより右にふれることは絶対にない。
図8-4-15のようにスレッショルド以下の入力では、VUメータの方は0VUを指してぴくりとも動かない。LEDの方は入力に応じて、緑色の部分が点灯する。ちょうどスレッショルドの時にも、VUメータは0VUを指したままで、LEDのほうは上側の最初の赤い部分が点灯する。スレッショルドを越えると、レシオで設定された分だけ、ゲインを下げるので、VUメータでは下げた分だけメータが左にふれ、LEDではゲインを下げた分は下の段のLEDが左向きに点灯する。上の段は「入力信号−コンプレッサで下げたゲイン」分だけ右側に向かって赤い部分が点灯するというわけだ。
| 状態 | VU | LED |
|---|---|---|
| スレッショルド以下 | ||
| スレッショルド点 | ||
| スレッショルドを越えた場合 (レシオ小さめ) |
||
| スレッショルドを越えた場合 (レシオ大きめ) |
||
| スレッショルドを越えた場合 (レシオ∞) |
||
| 図8-4-15 GRメータの振れ方 | ||
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| 図8-4-16 ステレオリンク1 |
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| 図8-4-17 ステレオリンク2 |
まあこれで確かに丸さんの声は抑えられたんだけど、これにつられて図8-4-17の下のように、中央にいる四角さんの声の左側の成分も小さくなってしまうわけだな。四角さんは左右同じ音量で出ているから定位が中央になるわけであって、そのうちの左側だけ小さくなったとすると、定位は右側にずれてしまう。しかも三角さんの声は右側からしかでていないので、コンプレッサがかからず、四角さんと三角さんは同じ音量だったはずなのに、四角さんの声の方が少し小さくなってしまうのだ。
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| 図8-4-18 ステレオリンク3 |
よってこのステレオリンクは、前述のリミッタとしての用途のコンプレッサでは必ずオンにしておく。
さて、このディエセッサはどういった理屈かという事を説明するためには、ちょっとコンプレッサの回路について知っておく必要があるので、ちょっと話がそれるけどここで説明しておこう。
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| 図8-4-19 NFB |
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| 図8-4-20 アンプの特性 |
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| 図8-4-21 NFBによる周波数特性改善 |
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| 図8-4-22 コンプレッサのNFB |
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| 図8-4-22 ディエセッサ |
つまるところディエセッサとは、コンプレッサのネガティブフィードバックの中に、4〜8kHz近辺を強調するフィルタを入れた物というわけ。
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| 図8-4-22 インサート端子 |