駆け込み寺
パチンコ屋に勤めだして1ヶ月ほどした頃、新人の2人組が入ってきた。見るからに未成年のその2人は、その日から住み込みで働くことになったのだという。まあ、あえて聞かなかったが、たぶん高校生の駆け落ち組だろう。夫婦(自称でかまわない)で住み込みで働くというパターンは、決して珍しくなく、パチンコ店から見ても、所在がはっきりするし、なによりもよく働く人が多いので歓迎する傾向にある。求人欄で「住み込み共働き○○万」とかわざわざ書いてあるのもそのためだ。
一応先輩(笑)である私は、男の子の方に、一通りの仕事の流れを説明したのだが、なんか要領を得ない返事ばかり帰ってくるので、「こいつ聞いてるのか?」という気になった。よく見ると瞼の上に最近の傷跡がある。「やくざやさんから逃げて来たのかなあ?」とも思うが、なんせ不愛想な奴なので、なにも聞かずにおく。女の子の方はお約束の景品交換所で、通いのKさんから説明を受けていた。
最近では、やたら横文字にして「新しいアミューズメントゾーンをクリエイトする」業界になってしまっているが、ちょっと前まではパチンコ屋というのは、「訳あり」の人間になにも聞かずに「職」を提供してくれる、駆け込み寺的な存在だったのだ。だから私が面接に言ったときに履歴書を持っていったら、店長に「珍しいねえ」といわれた訳なのだな。採用条件は「連絡先がある」ということだけ。容姿(極端でなければ)・年齢・性別・前科など一切問わない。
そういった訳あり組が多いためか、給料も「前借り」というのが当たり前のように存在した。毎月末に給料日なのだが、20日くらいになると、店長がわざわざ「前借りの奴いるか?」とみんなに聞いて回る。つまり、月初めから働いた分を給料日前に渡してくれる制度で、当然前借りの最高額は、その日まで働いた分となる。だから別にパチンコ屋にとっても腹は痛まないわけだ。現金は店内にいくらでも流通しているし・・(笑)で、給料日にはその前借り分を引いた額を渡してくれると言うわけだ。明朗会計で非常にわかりやすい。(笑)
住み込みの人はそこから5万円くらい、部屋代と食事代として引かれていたが、夫婦できっちりと仕事をすれば、何の経験がなくても、二人で住居費なしで月30〜40万程度にはなるのだから、悪くない仕事だと思う。ところが、パチンコ屋の店員というのはこらえ性がないのか、こらえ性がないからパチンコ屋の店員なのか、定着率はものすごく悪い。半年も勤めればもうベテランの域になるほど、みんな入ってきては辞めてゆく。パチンコ屋も特にそれを何とも思わない。考えてみれば不思議な職場だ。
ちなみに件の高校生駆け落ち2人組は、次の日にはもういなかった。(笑)
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