休憩

ずっとその場にいるような感じのするパチンコ屋の店員だが、少しずつ休憩時間がある。大体2時間おきに10分程度である。といってもやることと言えば煙草を吸うだけ。もちろん客の喫煙率95%、店員の喫煙率99%を誇るパチンコ屋のこと、仕事中でも煙草は吸えるのだが、立って吸うか、控室で座って吸うかの違いが「休憩」の意義だったわけだ。休憩は交代に取るので、控室の中では一人のことが多かった。だから他の人と話すこともほとんどなかったのだが、たまに主任などが金勘定をしていた。通常お金の計算などは閉店後やるものなのだが、両替用のお金がなくなるので、営業時間内にも補給していたのだ。厚さ10cm以上はあろうかという1000円札の束を、5台ある両替機それぞれに入れるのだが、一日数回補給しないといけないくらいの勢いで、1000円札は台間サンドに吸い込まれていくようだ。

当時このくらいの中規模店を郊外に建てると、5億円ぐらいかかる計算だったらしいのだが、バブリーな時代のこと、この5億円が2年で元が取れるぐらい儲かっていたらしい。まあ、当時はみんなパチンコ屋に行くのに、最低2万は持っていってたからなあ・・・・

で、休憩の他にまかない(食事)があって、これは無料でバイトにも支給されていた。店長の奥さんが昼と夜の2回御飯を作ってくれるわけだ。店長は自慢げに「うち(の店)の飯はうまいぞ!」といっていたが、要は食材センターから配達されるメニューを、そのまま作っているだけだった。もちろん料理が下手だとどうしようもないのだが、まあまあ、美味しく頂けたと言うところだった。ところが、みんな口を揃えて「ここは飯だけは旨いからいいな」とか言うのである。ということは他のパチンコ店の飯というのは、とてつもなくまずいところが多いと言うことなのだろう。

まあでも、比較的単純作業の仕事というのは、飯というイベントが結構楽しみになったりするものなのだ。(笑)飯も交代で取るのだが、さすがに一人づつだと効率が悪いし、何よりも準2部制のおかげでフルメンバーが揃っているので、大体3〜4人でまとまって取ることが多かった。飯のサインは左手のひらを上に向け、その上で右手で納豆をかき回すようなしぐさをするアレである。(笑)誰が考えたのかは知らないが、日本人の心根に深く宿っている合図なので、誰に教わらなくても「飯だ!」と直感できる。別に声に出して、「新居さん、食事です。」といっても怒るお客はいないと思うのだが、まあその辺は日本人の呼吸である。仕事中の飯は秘められたイベントであるべきなのだ。しかも「飯」であって、決して「食事」じゃないことが、合図からうかがえるのが素晴らしい。あくまで「飯」を食う時間であり、「食事休憩」ではないので、さっさと食ってさっさと戻れというのが、右手の回転の速さからうかがえるのだ。

で、その合図をうけると、直ちに2階のリビングに向かう。どこのパチンコ屋でも、2階は食事場所兼住み込みの住居のことが多いのだ。つまりパチンコ屋の2階は店員のライフステージな訳だな。(笑)そこで速攻で(シャレた訳ではないぞ。念のため。)飯を食うのだ。音にすると、「いただきま〜す・ぱくぱく・もぐもぐ・ぽりぽり・ず〜・ごちそうさま〜・ぷは〜」のよどみない一連作業だ。ちなみに、「いただきま〜す・ごはん・おかず・シメのたくあん・お茶・ごちそうさま〜・食後の一服」という流れね。これで大体15分。もともと私は音響屋だったので、「いつでもどこでもお茶なしで10分以内」というエネルギー補給のみの飯に馴れていたので、余裕で食べれたのだが、同じ時期にバイトをしていた奴は、結構大変そうだった。みんなが2本目のタバコに火をつける頃、やっとたくあんタイムだったからなあ・・・・



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